影について 9
ゲドが冥界から招き寄せようとした死霊は、あの神話の中で世界最高の美女といわれています。
彼女のためにかつての王国が亡び、最大の魔法使いが死に、王国が海底に沈んだと歌にうたわれているエルファーランの姿でした。
ゲドが呪文をとなえて、三度彼女の名を叫びます。
そうすると彼が腕の中に抱えた形のない黒いものは、たちまち人間の形をとり、不安げな表情を持つ美しい女性に変わりました。
しかしそれはほんの一瞬のこと。
その姿は輝きをまし、あたりにひろがって目もくらむような光となります。
その光の破れ目から、なにか恐ろしいものが這い出て、ゲドに襲いかかるのです。
それ以来、ゲドは自らのシャドウに追われる身となるのです。
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