影について 3
このように、シャドウには、主人公を助けるイメージと、敵対するイメージの二つがあります。
一方は性格は違っても、どこか気が合うところがあり、ゲドはカラスノエンドウのやさしさに出会って度々救われます。
彼のおっとりした広く暖かい性格の影響を受けて、彼自身の心の中のやさしさや暖かさを育てることができます。
しかし、もう一方のシャドウは、ゲドが自分の中の排除すべき性格として、日頃、抑圧しているものだけに、出会うとたちまち心中のコンプレックスにふれて、その力が動きだし抑圧を越えて無制限に彼の心の中から躍りでます。
それがヒスイに投げかけられたシャドウであって、ゲドはヒスイの態度に挑発されて、再び自分の実力を越える死霊を呼びだす魔法を使ってしまうのです。
こうしたシャドウは、おそらく誰もがもっているものでしょう。
質朴で一本気なゲドにとって、派手で都会風で、気の利いたせりふをはくヒスイの存在は、真似のできない口惜しさをあおると同時に、許しておけない悪徳のかたまりのように思えます。
現実のヒスイはお調子ものではあっても、決してそんな悪人ではないのですが、たまたま、ゲドの性格と反対の面を持ち、彼が無意識の中に抑圧している未発達で暗いイメージを誘いだす存在なのです。